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医療という世界は、ある意味では人の健康上の悩み、苦しみを生業にし、対価をもらいながら患者からお礼を言われるという不思議な世界である。 どこかで自分はエライ人間なんだとハキチガエてしまう人もいるだろう。
そして、昨今の歯科医療界の風潮として、インプラントができることがすごい、インプラントができなければ生き残れないと考えられているようだ。 数年前、ある歯科医師が、「俺は、自分の町の住民の約8割にインプラントをした」と豪語していた。
なにか間違ってはいないか。 歯科医師とは、本来、歯を残すことが仕事のはずだ。
もちろんインプラント治療を全否定するつもりはない。 しかし、インプラント治療とは、今ある歯を根管治療や歯周病治療を全力で駆使して、残す努力をし、それでも保存困難と判断されるときに行うべき治療ではないだろうか。
そして、そうした場合であっても、インプラントはあくまでも一つの選択肢でしかない。 にもかかわらず、いわゆるインプラント至上主義が蔓延しているのには、今の歯科医療界が直面する、崩壊秒読みの歯科保険制度による収入の減少、歯科医師供給過剰がひとつの原因と考えられる。
インプラントを1本40万円とすれば、保険で行う根管治療との収人差は、約80倍。 もちろん、高いほうがインプラントである。

しかし、その術式はインプラントのほうがシンプルであり、根管治療のほうが困難で治療回数もかかる。 シンプルで高額なインプラントと困難で低額な根管治療。
この2つが並立すれば、インプラントのほうに歯科医の目が行くのも無理ない。 頑張って歯を残しても得るものが少ないのであれば、いっそ抜いてインプラントにしてしまおうと考えるのが普通である。
なにせ、根管治療の治療費は国が決めているのだから、歯を残すことにはその程度の値打ちしかないと国が太鼓判を押してしまっているのだ。 歯を残す価値は、歯科医師が決めたのではない、国が決めているのだ。
そして、是が非でもインプラントに持ち込みたい歯科医師は、承諾なしに黙って歯を抜き、デメリットの説明をすることもなく、インプラントメーカーのにわか営業マンと化すのである。 すべてのインプラントが失敗することはないだろうが、当然、その中の少なくない割合で問題が起きるだろう。
そして、そのとき初めて事前に説明しなかった問題が、大きく膨れてくる。 グラつき、しびれ、腫れ、ぶち抜き。
こうした問題の多くが歯科医のミスから始まる。 歯科医は『ああ、しまった』と思うくらいで済むだろうが、患者は、よくするつもりで受けたインプラント治療で一転、混乱・不安・苦痛の底にたたき落とされる。
また、こうした悲劇を助長しているのが、インプラント治療費のダンピングである。 歯科医師の過剰による患者の奪い合いの果てに、インプラントの治療費は下降線をたどり、今では1本9万8千円というところまで現れてきている。

小売業界の価格破壊でも多分にそうであろうが、医療における価格破壊についても当然質の低下が伴う。 百円均一で買ったものが壊れても、まあ、こんなものかで済むだろう。
しかし、歯科医療、ことにインプラントは手術である。 ここでの質の低下は、そうはいかない。
医療事故は最悪の場合、命にまで直結してくる問題なのである。 1本40万という治療費に二の足を踏んでいた人の中にも、単純に手ごろな価格と思うだけで、安易にインプラント治療を考える人が出てくるだろう。
その結果、今まで抜く必要のなかった歯が抜かれ、粗悪なインプラント治療で、より多くの人がその災禍に見舞われる。 救いを求めて別の歯科医院へ行っても、インプラントを抜かれ、またインプラントを入れられる。
絶望の淵で患者は、その歯科医師はおろか、歯科医療全体をも信じられなくなり、苦しみを抱えながらどうしてよいのかわからず、ただ途方に暮れるしかない。 まさしくインプラント難民である。
インプラントに希望を抱いているのは、患者だけではない。 むしろ、歯科医師こそ高収入になるインプラントに希望の光を見出しているのではないだろうか。
そんな歯科医がささやく甘い言葉に惑わされないでほしい。 S院長に直接取材した15日夜、取材を切り上げて帰ろうとすると、その場に同席していたS院長の母親は、「週刊Aは私たちに死ねというのですか」「S、こんなので死んじゃいかんよ」などと、記者をなじるようにしゃべり続けた。
「僕らも死んでほしいなんて思ってないですよ」と、記者が言うと、母親はこう言った。 「Sには歯医者しかないんです」だが、指摘されていることが事実だとすれば、医療者としてあるまじき行為ばかりだ。
S院長は実は以前にも自殺騒動を起こしたことがあったと伝えられている。 保険医取り消しなどの処分が決まった直後、スタッフのいる前で首つり自殺を図ったらしい。
警察によると今回も「命に別状はない」という。 被害を訴える患者から逃げず、生きて、責任を果たしてほしい。
A市のインプラント使い回し疑惑に関する記事である。 この疑惑に関しては、A市が立ち入り検査を行い、同年4月12日に発表した報告では、使い回しの事実は確認できなかったとされている。

疑わしきは罰せずというところだろうが、経験を積んだ歯医者から見れば、不自然なことがたくさんある。 使い回すつもりでストックしたインプラントなんて捨ててしまえばわからないし、すでに別の患者に植えてしまったインプラントは、掘り返さない限り確認のしようがない。
インプラントには、それぞれロットナンバーのシールがついており、通常、使ったインプラントのシールをカルテに貼る。 立ち入り検査の結果では、任意抽出した30人の患者のうち、4人の患者で計7枚のシールが不足していた。
これが使い回しの証拠でなくてなんであろう。 しかし、これですら貼り忘れてなくしてしまいましたと言われればそれまでである。
真実は霧の中。 限りなく黒に近いグレーであったとしても、『事件』ではなく、『疑惑』のご言に落ち着かざるを得ない。
かなり物議をかもした話ではあったが、中にはご存知でない方もいらっしやると思うので、ここでこの『疑惑』の概要を説明しておこう。 2009年冬、週刊A編集部にある告発があった。
「F市の歯科医院でインプラントの使い回しが行われている」耳を疑う内容に編集部は調査を始めた。 その歯科医院は新聞やラジオで盛んに広告を流している地元でも有名な歯科医院である。

また、ホームページでは、約2000人に6000本近くのインプラント手術を行ったと大々的にその実績を報じていた。 何も知らない一般の人はこれだけで、よほどはやっている、ウデのいい歯医者さんなんだろうなと思ってしまうだろう。
しかし、その裏には恐るべき事実が隠れていた。 「インプラントの使い回し」である。
インプラントの埋人を行ったがうまくいかず、脱落してしまったインプラントを台所用洗剤で洗い、滅菌後、別の患者に再び埋人していたというのだ。 脱落の理由は、様々に考えられる。
当然、中には、患者のメインテナンス不足というものもあるだろう。 しかし、もし、メインテナンス不足によるものであれば、最低でも術後3ヶ月から半年の歯槽骨の生着期間を経た上部構造の製作後であろう。


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